足立製作所日記

デジタルツールを使ったものづくりのブログです。何でもこしらえてみましょう。

技術開発というのは何なんでしょうね?

未知の課題に対するアプローチはいくつもやり方があって、これという正解はないと思う。ある状況でうまくいった手法が他の課題に対して有効かは分からない。

 

そうではあっても、ある程度こんな感じという型はあると思う。最初に課題をきっちり設定しておくことが前提ではあるのだが、情報を探して入手して、見て触って色々試してみること。なーんだと思うかもしれないが、実は得られる情報としてはこの方法が最大になるのではないかと思っている。

 

この最初のステップで何を見るかというと、そのトライが着地としてどのような価値を得られるかということ。性能でも耐久性でもコストでもいいのだけれども、これが従来のものからどれぐらいアップするのか、もしくは全く違う価値を生み出すものかどうかを見極めるのだ。

 

ここで首尾よくそこそこの結果を得られれば、その技術なり方向性は可能性が高くて、「筋がいい」ということになる。商品の訴求面も含めた新技術、新機能の提案を「技術企画」と言ったりするのだが、良い企画提案をしようと思えばこういった「筋がいい」ネタを複数かかえていることが重要。

 

ネタの発見ということでは、実験をして事実の確認はするものの、どちらかというと運に左右されるところがあるように思う。どうしたら運に恵まれるか?答えの一つは外にでかけるということ。自分が見たことのない物事を見聞きして、片っ端から試してみること。

 

上手くいきそうな技術が見つかれば、今度はその技術がもつ「特性」みたいなものを明らかにしていく。メカニズムの解明とも言えるのだが、結果を左右する因子はどれで、どのパラメータを変えれば結果がどう変わるのかということを明らかにしていくのだ。そしてそれを予測式として成立させる。

 

非常にコンパクトなシミュレータを作るといってもいいかと思う。ここまでできれば、技術目標に対してどこを攻めればクリアできるのかという仕事の方向性がはっきりする。そしてその方向に沿って、制御を調整するなり、材料を変えるなり、部品の寸法をいじるなりしてその反応を見ていけばいい。

 

このようにして基礎技術データを取得し、メカニズムを明らかにした上で具体的仕様を決め、プロトタイプを作成した上でその機能・性能・コストが目標をクリアしていることを確認する。開発対象によって様々だとは思うが、大体ここまでが技術開発の実務になるかと思う。

 

本来、ここまできてやっと「設計」という行為に移れる。技術は設計するために用い、設計はモノづくりのために行い、モノづくりは、売るために行う。技術と設計との区分けは何だかあいまいなような気がする人がいるかもしれないが、私の中ではいつも分けて考えている。

「開発」という大ぐくりの概念があって、その中に「技術」と「設計」があるというイメージ。技術はある課題を解決する具体的手段の体系で、アウトプットは技術データとプロトタイプの確認結果。設計は技術成果を用いて具体的な形そのものを決めていく作業で、アウトプットはモノづくりの図面。

 

まあ、ここまでつらつらと書いてきたことは、理想としてはこうだなというところで、実際にはこんなにきれいに進むことはほとんどない。チームで仕事をすると人によって方法論が違うし、皆忙しいので時間がかかるように見えるやり方は嫌われる。

 

どこを目標にしてどのようなやり方で仕事を進めるのかを決めるのは技術リーダーの重要な仕事だと思う。個々人にテーマを与え、アウトプットと期限を明確にして進捗管理する。仕事の細分化と明確化というのがポイントでこれを怠ったり、あやふやだと十中八九失敗する。炎上確実で怖いことに。

 

技術開発の話がプロジェクトマネジメントの話になってしまったけれども、つくづくプロマネというのは大変な仕事だなぁと思う。自分でもどうなるか分からないのに、人を使って結果を出す難しさ。これをうまく捌ける人はほんと尊敬する。

 

また気が向いたら何か書きます。