足立製作所日記

デジタルツールを使ったものづくりのブログです。何でもこしらえてみましょう。

CAE解析について一考。

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いつも使っているFusion360というソフトが先日アップデートされ、シミュレーション機能が追加されました。

 

いやはや、無料のCADでここまで実装するとは驚きを禁じえません。個人でもまともな設計計算ができるようになったというのは実に凄いことです。

 

でも、便利そうに見えるものでも、目の前に大きな落とし穴があったりするもの。今回はそんな類のことをつぶやきました。

 

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Fusion360でシミュレーション機能が追加されたけれども、これってソフトウェアの使い方よりも、実験に基づいた解析モデルをどう構築するかの方にノウハウが要るのだよなぁ。理論式と現実のばらつきをどう評価するということなんだけれども、技術者であってもできる人は非常に少ない。

 

ぴたっと値が予測できることはそもそもないし、そのような使い方をするものでもないのだが、いい加減な答えしか出ないと言ってまるで信用しない人がいるな。ちゃんとどういうものかを理解する所から始めないとソフトの使い方が分かっても役に立たないのだ。

 

CAE解析は使い方のリテラシーがないと、場合によっては間違った判断をしてしまうような、ある意味危険なソフトウェアだ。そして多くの人は使う時期も間違えている。設計が完了した3Dモデルを時間をかけてCAE解析して、変形やら応力やらがこんな風になりましたとか。現実と比べてこれだけ違います、うーん、なんて。そういうの違うって!

 

やはりCAE解析は設計の指針を得るために使うのが王道であって、時期的には技術開発フェーズ、もしくは設計の初期段階で使うものなんだな。そして使う3Dモデルもそんなに複雑なものは不要だ。

 

CAE解析はその検討初期に「良い解析モデル」を作る必要がある。なるべく簡単な形状が違う試験ピースを作り、変形なりなんなりを実測して、基礎技術データを取得する。そして、その現象が再現できるようにCAEソフトウェアで境界条件を決めていくのだ。これが最初にないと何も判断できない。

 

そしてその解析結果の評価も、1ポイントでの数値の違いを見るのではなく、数値の変化の様子が現実世界をシミュレートできているかを見るのだ。静特性ではなく、動特性を見るといったらいいだろうか。

 

大体似たような特性を示していたなら、今度はCAE解析モデルから得られた予測式周りに実測値がどれほどばらつくかをプロットしてみる。CAE解析から導き出された予測式(平均値の変化)とバラつきが次の現象を予測するのに必要十分かという、そういう評価をする必要がある。

 

バラつきが必要十分に小さく、平均値変化の傾向も現実と合っている解析モデルが「良い解析モデル」なのだ。どこまで追い込めばいいかは時と場合によるけれども、大体現実世界の8~9割が説明できていればかなり役に立つように思う。

 

CAE解析というのは現実の現象の大きな要因だけを取り出してシミュレートするものだから、正確な数字がばっちり出る訳はない。いわば傾向しか分からないもの。そこに実験から得られた実測値を合わせると、このバラつきの範囲内であれば信頼度95%で確からしいとか言えるようになる。

 

そうして「良い解析モデル」が構築できれば、今度は求める複雑な形状で試してみる。CAE解析の良いところは、前提となる解析モデルが信頼できるものであるなら、形状が複雑になっても同じように結果が信頼できるということ。ここにコンピュータで解析する大きなアドバンテージがある。

 

最初に複雑な3D形状をCADで作り、それをCAE解析しても、ほとんど何の役にも立たないことが分かってもらえるだろうか。実実験と組み合わせた解析モデルの構築という作業が絶対的に必要なのだ。

 

また思いついたら何か書きます。