3Dプリンターは革命の手段になるか。。。
こんにちはohmistarです。
設計という行為は、その昔は二次元図を使ってやっておりました。
今現役でバリバリ3D-CADを使って設計している人からは想像しにくいと思いますが、二次元図を使っての設計もやろうと思えばできるのです。あたりまえですが。。。
でも、設計という行為のその本質のところは措いておいて、純粋に作業として考えてみるに、やはりこの二次元図での設計というのはかなりつらい作業ではありました。できるようになるまでにはかなりの修行がいるのですな。
最初は既存図面のトレースから練習を始めて、単品の類似設計へ。そして、複数の部位に亘る設計へと移行する。
こんな感じで成長していくので、まともになるまでに数年間かかるし、きっちりとミスなくできるまでに数々の痛い目に合うものです。
ミスの中でも恥ずべきものは、良く検討できておらず、部品が入りませんでしたとか、動かしたらあたっていましたとか。。。
こういう単純ミスが発覚したときには、その後の周囲の反応をリアルに想像して、冷たい汗がつーっと流れたものです。
設計の環境が3D-CADになって良かったのは、こういった単純ミスの事前発見確率が飛躍的に上がったことです。
二次元図面を見て立体をイメージするというのは、できる人にとっては何でもないことなんですが、分からない人にとっては相当難しいことのようです。
3D-CADの世界ではそういった分かりにくいところが相当に排除され、自分自身のみならず、他人も目も入りやすくなって凡ミスはかなり減ったんじゃないかと思います。数字では表せませんが、感覚ではそんな感じがします。
しかし、相当数凡ミスが減ったとは言え、全く皆無になった訳ではありません。CADの機能として干渉チェックとかもありますが、これとて完璧ではない。やはり最後は人が注意深くチェックできるかということに帰結するわけです。
3D-CADの中だけでも時間をかければ凡ミスは排除できる。でもそのやり方は効率が悪いのも確かなんですね。
そこで3Dプリンター登場です!
極端に言って、これを凡ミス発見装置としてだけでも買う価値があると私は思います。
現物として出力され、触れる造形物が持つ視覚的、感触的情報量はコンピュータの比ではありあません。
まさに現物に勝るものなし。
3D-CADや3Dプリンターが個人レベルで手に入る環境が整ってきたからこそ、設計の作業としての品質がその道のプロに近づいてきた。
これが3Dプリンターがモノづくりの革命たりえるのではないかという点です。
過去に様々なものごとが、一般大衆の手に入ったことをして革命というならば、IT技術とそれにつながる製造系デジタルツールの隆盛もまた革命と呼べるのではないかと思います。
次は何か?
革命で体制が変われば、次に変わるのは作るもの自体。いや作るのはもうモノではないのかもしれませんねぇ。何かは私もうすぼんやりとしか感じてませんが。。。
デジタルツールとか実際に使ってから議論しませんか?
前回の掃除ブラシハンガーの設計は諸般の事情により少しお休みです。
スミマセン。。。
代わりといってはなんですが、ブログ開設以前にFBの方で投稿していたものをここで再ポストします。
3D-CADと3Dプリンターに興味がある方は是非読んでみてください!
---FBから過去ログ引用---
最近の3Dプリンタについての記事とか報道を見ていると、私が18年前にやった仕事を思い出す。一種の流行ものに対して、人がどのように反応するのかについて考えると非常に興味深い。
今から18年前、私はある家電製品の設計に3D-CADを導入する仕事に携わった。量産設計の仕事を一時的に外してもらって、ベテラン設計者一人と私よりも若い設計者、それから情報システム関係の人間でチームを組んで仕事をした。やったことは3D-CADの選定とそれを用いて設計ができるのかの検証、および設計手法の確立だった。
その当時、ちらほらと3D-CADを導入する企業が増え始め、具体的な事例も出てきたところだった。ここで良く言われていたのが3D-CADによって設計のやり方を革新的に変え、設計の完成度を飛躍的に高めることができるというもの。当たり前のことだが、道具を変えるだけで設計完成度が高くなるというようなミラクルなことはなく、設計の重要なポイントは他にあるのだが、皆熱に浮かされたようにこれに注目していた。
お金を使って道具を導入するのであるから、ある一定の費用対効果を求められるのだが、これが非常に難しかった。3D-CADを導入した結果の効果などどうやって数値化するのか。結局、金型製作期間の短縮とそれに伴う金型費削減ということで稟議を通してもらったように記憶している。でも実際の効果はそういう所ではなかった。やはり3D画像や3Dデータが持つ圧倒的な形状伝達力がその本質であった。
それまでも2次元図面で仕事が進むようにシステム化されており、3D-CADは仕事の進捗上必ずしも必要ではなかった。しかしこの2次元図面というのがくせ者で、これをまともに読めるようになったり、ましてや描けるようになるためにはかなりの修行が必要となる。およそメーカーの仕事には必要な技能なのだが、よく分からない人も一定数いたのだと思う。一度3D図面を見慣れてしまうと、視覚で直接形状を把握することができ、その分かりやすさは2D図面の比ではなかった。お金には換算しづらいが、確実に効果はあったのである。それから試作業者の3Dデータ対応が進むにつれ、試作品の制作期間も劇的に短くなった。3日で設計、10日で試作、思いついてから2週間後に試作品を入手するという芸当は二次元設計時代にはあり得なかったと思う。大体試作期間は半分になってきた。
このようにすったもんだして導入した3D-CADだが、その当時の人々の反応は様々だった。自分は使ったことがないのに他で流行っていることを聞きつけ、とにかくやれと号令をかける人。自分の仕事のやり方を変えることを頑に拒み、新しいことに取り組もうとはしない人。新しいことに非常に興味があり、積極的に使ってみる人。そしてこれらの動きを横目で見ている人。。。
私がこの仕事から学んだのは、やはり新しい物事に挑戦すればそれなりに得られるものはあるということ。新しい物事に接するにあたり、口先だけの評論家になってもいけないし、逆に頑に拒否しても進歩はない。地に足を付け、冷静に、でも情熱を持って取り組んだ人だけがその成果を得ることができるのではないか。今巷で流行っている3Dプリンターも騒いでいる人のうちどれほどの人が実際に使ったことがあるのか。こういうものは初期の熱狂が終わってからその真価を発揮するのではないだろうか。なぜならば、後になれば口先だけの外野は去り、本当にまじめに取り組む人だけが残るであろうから。
リンクは前に話題になった3Dプリンターで作る自家製銃の話。古くて申し訳ありません。
掃除ブラシを風呂場に置かなくては! その1
みなさんこんにちは、ohmistarです。
先日私の奥様がお風呂掃除用のブラシを買ってきたのですが、フック部の形状が良くなくもともと付いている壁のバーに取り付けられなかった模様。そこで私に何とかするように厳命が下り、何とかすることに相成りました。
買ってきたブラシはこんなもの。
そして壁のバーはこんな感じ。ブラシ端部のフックがバーの直径に対して小さいんですねぇ。
この程度のものならああやって、こうやって、こうすればできるなと思ってしまうのですが、それでは面白くありません(`・ω・´)キリッ ここは一つガチでバーとブラシを繋ぐハンガーを設計してみましょう。たった一部品ですが。。。
具体的な作業に入る前に、皆さん「設計」とは何をすることだと思いますか?これは人によって様々な考えがあると思いますし、定義もそれぞれですが、ohmistarが考えるのは次のようなことです。それは。。。
「設計とはある機能を実現する手段を具体的な形にまで落とし込む事」です。
なんだか分かったような分からないような感じですが、ポイントは3つ。
①目指すべき機能
②実現手段
③具体的な形
少なくともこの3つがないと設計とは呼べないんじゃないかと考えています。
皆さんお気づきですか?世間一般的に設計というと、出力した図面や試作品の前で設計者が色々検討していたり、コンピュータで3Dモデルを作ったりしているのを思い浮かべると思います。でもそういった具体的な形状検討の前に、2つほど良く分からない作業があるんですね。そして実はこの2つの作業の方がずっと重要だったりします。
次回はまず「目指すべき機能」の定義から説明していきます。
三次元設計に必要なモノとは?
こんにちは、ohmistar(足立)です。
ただのカバーですから、簡単にやればあっという間に終わるけれども、凝ってやればそれなりに時間がかかるものです。
今回はとりあえず金型設計にもっていける(はず?)のところまで作りこみました。
ところで三次元設計に必要なモノって何だか分かりますか?
問い自体も漠然としているし、人によって答えは様々だと思いますが、ohmistarとしてはこんなモノ達です。
①二次元図面
三次元設計は当然3D-CADで行いますし、3D-CADには画面上で部品間のクリアランスを確認したり、干渉チェックをしたりする機能が付いています。付いてはいますが私はそれだけで複数部品の設計を行う自信が全くありません・
まず必要なのは自分の決めた形状と寸法がどうだったかを記録しておく機能です。例えば部品の幅が100mmとか、クリアランスを0.2mmに設定したとか。。。
形状が単純なうちは記憶しておけますが、複雑になれば覚えておくこともままならず、覚えておかなければ設計意図通りにモデリングが仕上がってきているのか確認する術がありません。
一番簡単なのは全て図面に書き込むことです。紙媒体に近い状態のものが良いのは一覧性に優れていること。図面に寸法を記入しておけば、自分の考えを後から追跡することが可能ですし、三次元モデルを修正した時の設計確認も容易にできます。
機械系ミドルレンジのCADであれば大抵二次元モジュールが付属してきますし、設計している三次元モデルとも連携して図面を自動修正してくれます。
もしかしたら、もっと他に良い方法があるのかもしれませんが、私はずっとこのやり方で設計してきました。
②参考品の現物
設計をするというシチュエーションは全くのゼロから創造するなんてことはほとんどないわけで、何らか参考にする現物があります。というか参考になる現物がないと設計はできないですからねぇ。
③ノギスと定規
コンピュータを使っての設計は便利なんですけれども、欠点が一つあってそれは寸法感覚が狂ってしまうということ。画面に映っているモデルと現物は基本的に同じ大きさではありません。ですから常に定規をそばにおいて、自分が入力した寸法が現実にはどれぐらいの大きさなのかを確認しながら進めます。あ、当然現物も測ったりしますよ。
④電卓
やはりあれば便利です。電卓で計算して寸法を確認しながら設計する癖をつければ、うっかりミスの防止に役立ちます。私の最初の上司が新人だったころは、そろばんで計算していたそうな。。。
⑤紙
定規で測った寸法とか、電卓で計算した結果とか、ちょっとしたスケッチとか、そんなものをメモします。アナログですねぇ。
でも、最近はもっとスマートなやり方があるのでしょうかね?
iPhone6 モデリングしましょ! その3
みなさん、こんにちは!ohmistar(足立)です。
ようやくiPhone6の3Dモデリングが完了しました。
いやー、疲れた。二次元の図面を見ながら3Dデータを起こすなんてことはここ10年ほどやっておらず、久々にがっつりやった結果がこれです。
当初はさすがアップル、詳細な図面で完璧!とか思っていましたが、きっちり定義できていない形状とか、寸法自体が抜けているとか、ある部分の形状を決める寸法があちこちの投影図に散らばっているとか、二重寸法があったりとか、寸法を足し算していくと矛盾しているとか、寸法の記入スタイルが統一されていないとか。。。
結構ありました。。。きっちりと検図してないのが丸分かり。。。
まあ、別にこの図面で金型を起こしている訳ではないし、スマホケースを作ったりするディベロッパーに形状とか注意事項とかを伝えるものだし、その目的を達するためには十分な図面ではあります。
でも、もう少しきっちり描こうよアップル。。。
とにかく、iPone6本体のデータはできたので、次はケースの方を色々取り組みます!
ohmistar
iPhone6 モデリングしましょ! その2
こんにちは、ohmistar(足立)です。
iPhone6の図面を落としてきたので、早速モデリングを始めてみたいと思います。
私が愛用しているのはSolidEdge ST7という機械系ミドルレンジ3D-CAD。家電技術者であったころからの付き合いで、すっかり手になじんでいる相棒です。45日間の無料評価版とそれ以降は月払のレンタルもやっています。
モノを設計する時には当然色々考えることがあるのだけれども、今回は2D図面から3Dモデルに変換するだけなので難しいことはなし!ひたすら単純な作業の繰り返しとなります。
まずは図面をざくっと見て外形寸法を確認してその通りに。
ここに限らず寸法は100分台まで入っています。元々の設計はインチ単位系でやっているからなのだろうな。。。設計的にはほとんど意味がないけれども、おおせのままに作業進行です。
データの原点は本体中央、ガラス面に設定。モデルは空間上に横置きで配置します。
この設定は今回は特に意味はありません。
次は4コーナーの丸み付け。驚くことに単純なRではなく細かく寸法が指定された複合Rになっている!ここまで細かいところにこだわっているのか。。。めちゃくちゃ邪魔くさいけれどもやはり仰せのとおりに。。。
と思ったらできない!接線性を持った複合Rかと思いきや、どうもそうではないらしい。この寸法定義では接する円弧で繋げない。仕方がないので適当にごまかすことにしよう。。。
次は側面の丸み付け。ここでもこだわりの複合Rが。。。
単純Rではないので、わざわざ断面をスケッチして、外周に沿ってスイープ機能で切り抜きを。。。うぅむ、、、めんどくさい!
むぅ~、アップルのデザイナー侮りがたし。異常なこだわりだ。
疲れたので今日はここまで。また作業進めます。
ohmistar
iPhone6 モデリングしましょ! その1
こんにちは、ohmistar(足立)です。
家電量販店に行くとスマホのケースが山のように売られていますよね。
私も持っているんですが、これ、自分で作れないかと前から思っていました。
参考になる現物は山のようにあるし、3D-CADが使えて3Dプリンターを持っていたら自作できるのは間違いありません。
ケースを設計しようと思えばまずはスマホの本体の形状データが必要!ということでネットをあさったのですが、これがなかなかない!!!
やっと見つけたものはSTLデータのもののみ。3Dプリントするにはこれでいいのですが、私の環境では3D-CADに取り込んでも寸法を参照することはできませんでした。
やり方があるのかもしれませんが、結局わからずじまい。
てなことを最近お世話になっているYOKOITOの中島さんに話していたら、「アップルで図面を公開してますよ」てなことをおっしゃるではありませんかっ!
早速アップルのページを探したらありました。
iPod、iPhone、iPad 用ケースの設計 - Apple Developer
このページのApple デバイス用ケースの設計ガイドラインというところをクリックすると関連のPDFファイルが開きます。下の方にスクロールしていくと。。。
でたiPhone6の図面!
さすがディベロッパー向けの図面。完全に形状定義できています。
ていうか、3Dモデルから2D図面を起こしているんなら、最初から3Dデータ置いておいたらええんとちゃうの?と思うけれどもまあ良しとしましょう。
この他にもアップルが出しているガジェットは過去のものも含めて網羅されている模様。他のものも作れるなぁ。
でもとりあえずiPhone6の3Dデータを作成することにします。
続編、こうご期待!
ohmistar